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【燃えろ!!デブ野球】第18回 オカダ・カズチカの姿に棚橋を重ね、オカモト・カズマの一発に江藤智を思い出した

燃えデブ第18回は広島、巨人、西武でプレーした通算364本塁打のホームランアーチスト江藤智!

真夜中のプロレス観戦。ピザとコーラのハイカロリーフロー

 真夜中にソファの上でピザとコーラを頬張りながら、プロレスを見る。

 世の中にこんな幸せなハイカロリーフローな時間が他にあるだろうか。4日に福岡国際センターで行われた新日本プロレス『レスリングどんたく2018』のメインイベント、王者オカダ・カズチカと棚橋弘至が戦ったIWGPヘビー級戦は興味深い試合だった。棚橋が持つV11を超える最多防衛記録V12に挑むオカダ。現在41歳の棚橋も若かりし頃はアメリカのマット界進出も考えたという。だが、この場所で踏みとどまり危機的状況の新日を立て直した。以前、死亡遊戯本でインタビューした際「まあキャリアの半分を会社の立て直しに使っちゃいましたけど…。だから今の若い選手がうらやましいなと。最初から盛り上がってるリングでできますから」と苦笑いしながら話してくれたのを思い出す。

 最近、30歳のオカダの仕事ぶりを見ていると、チャンピオン時代の棚橋の姿が被る。過去にこれほどスムーズな世代交代があっただろうか。新団体設立のためいきなり独立したり、ライバル団体で社長の座に収まったり、オレがオレが…のプロレス界に正当な“世代交代”という概念を持ち込んだのは棚橋の功績だ。ある種の世代継承と言ってもいい。20代でやんちゃして、激動の30代を経て、俺らは棚橋弘至のような40代になれるだろうか…なんつって今週も大型連休明けのブルーマンデーをやり過ごす連載『燃えデブ』が始まった。

ある元巨人ファンが、巨人ファンを辞めた理由にあげた江藤のFA移籍

 今シーズン、闘強導夢…じゃなくて東京ドームで巨人のオカモト・カズマのスイングに往年の江藤智を思い出すオールドファンは多い。ともに右打ちの一、三塁を守る長距離砲で、ホームランアーチスト特有の滞空時間の長い一発が売りだ。185cm、96kgで高校通算73本塁打の岡本、182cm、95kgで高校通算61本塁打の江藤と体型も選手タイプもかなり近い。入団時は捕手だった江藤は広島カープの猛練習で三塁手として鍛えられ、5年目の93年には34発放ち23歳の若さで初タイトル獲得。95年には39本、106打点で二冠に輝く。同世代の前田智徳とのコンビはリーグ屈指の破壊力だった。そして、99年オフにはFAで巨人、中日、横浜の争奪戦が繰り広げられ、東京出身の江藤は巨人移籍を決断するわけだ。これにより長嶋監督は33番を江藤に譲り、ミスターの背番号3復活ストーリーへと繋がっていく。

 そう言えば先日、ライター菊地高弘さんの新刊『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)発売イベントにゲスト出演した際、ある元巨人ファンの「自分の中で落合や清原のFA獲得は『若い松井を4番に育てるために必要な壁』と理由づけられた。でも江藤の補強は意味不明で完全に冷めて巨人ファンをやめました」という体験談の話になった。百年の恋も一本の鼻毛で冷める的なエピソードだが、のちにFA移籍してくるガッツ小笠原の熱烈歓迎ぶりとは天と地の差だ。確かに落合、清原、小笠原の獲得はファンもほぼ納得。広澤克実、村田修一、そして江藤の全員ぽっちゃりトリオの移籍時は巨人ファンの間でも賛否分かれた記憶がある。

もしも江藤があと20年遅く生まれていたら…

 超一流と一流の差なのか、キャラの差なのか難しいところだが、江藤は巨人1年目に32本塁打、91打点をマーク。リーグ優勝を決めた中日戦9回裏に放った同点満塁弾はG+の懐かし映像で200回くらい見てる気がするし、ON対決で騒がれたダイエーとの日本シリーズでも打率.438、2本塁打と活躍した。翌01年もしっかり30発を放った江藤獲得、悪くないっすよ。過小評価しすぎでしょ…といったい誰に対して反論しているのかは分からないが、今こそいつもニコニコ“微笑みのバズーカ”を擁護したくもなる。

 しかも江藤は05年オフには豊田清の人的補償で西武ライオンズへ移籍。FA移籍してきて、FA人的補償で去るスラッガー。まるで新日でタグチジャパンをTwitter上でクビになったヨシタツのような扱いである。金銭補償と油断していた巨人GMは「こちらの手違い」と苦しい弁明だったのも今となっては語り草だ。結局、そのまま西武で4年間プレーしたのち09年限りで現役引退。通算364本塁打という数字を残した。

 思えば、最近の球界で「毎年30本塁打を打てる29歳のスラッガー」がFA国内市場に出ることはほとんどない。だって、みんなメジャーを目指すから。今なら23歳でホームランキングを獲得するような和製大砲はメジャー球団も調査していたかもしれない。例によって強引な展開だが、もし江藤があと20年遅く生まれていたら、日米で争奪戦になっていたのではないだろうか? そして、移籍先では熱狂的に迎えられていたことだろう。

 早すぎたホームランアーチスト江藤智。なお90年代の通算本塁打数で江藤は、松井秀喜や池山隆寛を上回るセ・リーグ最多の248本を放っている。

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