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ポチャメン人生ゲーム ユウキとアツヒロ 『四十路前で見えてきた、2人が背負った脂の違い』

この物語は、大学の同級生だった二人が、金と仕事とデカ盛りに奮闘しながら年齢を重ね、色んな意味でビッグになっていく、人生ゲームのようなお話です。


千葉県出身のユウキ(39)と新潟県出身のアツヒロ(39)が出会ったのは大学のラグビー部だった。ともにフォワードを務めるガッチリした体型。ウマが合った2人は、毎日練習後に学食の大盛カレーや、近所の定食屋で爆盛定食をかっこみ、ガリガリ君を頬張りながら将来の夢を語っていた。

その後、有名タレントも多く所属する芸能事務所のマネージャーとして、華やかな芸能の世界へ飛び込んでいったユウキ。かたや子供の頃から本が好きで、大手出版社へ入社し編集者となったアツヒロ。

4年間スクラムを組んでいた友情は卒業してからも途切れることはなかった。業界は違えど、ライバルとしてお互いを認めていた2人はすっかり大きくなった腹をさすりながら、定期的にかつての遊び場「渋谷」に集合しては、大学時代の定番「ゴールドラッシュ」の1ポンドハンバーグを食べ、近況を語り合っていた。そんな東京の街をサヴァイブしてきた2人の巨漢も、四十路を前に大きな岐路に今立たされようとしている。

アツヒロの告白 悩みなんて弁当3つ食べて寝れば忘れると思ってた


元々勉強はできる方じゃなかったんですが本を読むのは好きだったんです。そんなに難しい小説じゃないですよ、東野圭吾や村上春樹みたいに純粋に読んで楽しめる小説が好きでした。あとスポーツが子供の頃から好きだったので、Numberや週プロも定期購読してましたね。漠然と将来は出版社で何か本を作る仕事したいなと思い上京しました。

これ言うと怒られるんだけど、最初、東京は飯がまずいなって(笑)。実家は新潟の農家だからうちはコシヒカリが食べ放題。母が作るたれかつ丼は本当旨くて最低3杯は食べれた。おかげで高校で体重は90キロでしょ、相撲部に誘われたけどかっこ悪いし、まわし締めるのが嫌だったから。大学でもラグビー続けて、そんとき出会ったのがユウキ。

あいつはラグビーはそんなに上手くないけど(笑)、とにかく大食いだから気があった。よく行ったのは神宮前の「金魚鉢」で、ビックリするぐらいの豚しゃぶ定食をどっちが速く食いきれるか勝負してましたね 。(編集部注:金魚鉢は移転して現在は大盛がウリの弁当屋さんに)あとは渋谷南口の「仙台や」さんだよね。丼からこぼれそうなカツ丼がとにかくすごい。新潟にもこんなに大盛の店ないからハマっちゃってね。学生だから金はないけど腹は減るでしょ。2人で大学からわざわざ30分以上歩いて行って食ってたもん。

女の子とデートする時はもっぱらステーキか焼肉だった


大学卒業後、出版社へ入社して最初に配属されたのが情報誌の編集部。体力だけには自信があったんで、自分で車運転して全国走りまくって取材してました。「お前は体でかいんだからいっぱい食えるだろ」って編集長から指名されて大盛グルメ企画をよくやらさせてもらいました。経費でカレー食い放題でしょ、本当に最高の仕事でしたよね。「まんてん」「カレーの店スパイス」「リトルショップ」「もうやんカレー」「牛八」とか都内の有名店は行きまくりましたよね。女の子とデートする時はもっぱらステーキか焼肉連れてきました。ユウキは派手な女好きだったけど俺は田舎もんだから真面目であんまり飾らない子が好きでね。連れてくとこも極端な高級店じゃなく幡ヶ谷の「てっぺい」とか渋谷の「炙火家」の肉のチョモランマとかね。もっと言えばラーメンデートとかもしましたよ。美味しんぼみたいにラーメンライスで喜んでくれる子とか性格最高だから。

そん時住んでたのは笹塚の家賃9万円の1LDK。出勤時間も1時間圏内だし、一応渋谷区だから慣れ親しんだ土地で安心感が。ちょっと飯食いに行くなら洋食屋の「ロビン」が最高。絶対頼むのはミックスフライ定食で絶品なんだよなあ…。京王線の庶民的な雰囲気が好きで10年くらい住んでましたね。

仕事も楽しいし、給料も30超えた時、年収で1000万いきましたから言うことなしだったんですよ。でもリーマンショック以降、市況の変化もあってか情報誌の部数がどんどん落ちて行って……ついに雑誌の休刊にともない、週刊誌の編集部へ異動したんです。同じ雑誌でも全く仕事内容が違うでしょ。ユウキのとこのアイドルでグラビアページ組んだりするのはそれなりに楽しかったんだけど、芸能人のゴシップとか個人的に興味もないし、人が隠したいことを暴くっての精神的にキツくて。さらに2011年に震災があったじゃないですか。現地へ飛んで取材したんだけど、とにかくその被害の大きさにショックを受けて。みんな家も失って苦しんでるのに、俺は取材が終わったら東京へ帰れるし収入もあるじゃないですか。「俺は何をしてるんだろう、取材なんかやめてボランティアでもした方がいいんじゃなか」って悩んでしまってね。半分鬱みたいになって休職したんです。

次回へ続く