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【燃えろ!!デブ野球】第6回 「4番レフト マルちゃん! いつの時代も“無謀”は時に“希望”だ」

燃えデブ第6回は、西武V2の原動力、長嶋巨人の最終兵器、巨漢大砲ドミンゴ・マルティネス! 

オカダ・カズチカを見て思う野球選手のアスリート化


 全盛期のオカダ・カズチカを日本で観られるのは幸せなことかもしれないな。

 6日、満員御礼の後楽園ホールへ新日本プロレスを観に行ってきた。この日、メインイベントに登場したのは現在IWGP王者を9度連続防衛中のオカダである。絶対的エース制は強すぎてつまらないという声をちょくちょく聞くし、俺も時々そう思う。ここだけの話、今年のパ・リーグはできればソフトバンク以外に勝ってほしいと願う。けど、実際に会場でその戦いぶりを見るとやはりレベルが違う。相手選手、観客、カメラの位置、そのすべてを把握しているかのような動きは別格で、「仮にオカダが中邑真輔のあとを追ってアメリカのWWEへ移籍したら」と考えるとゾッとする。ケニー・オメガや内藤哲也はもちろん素晴らしいレスラーだが、30歳とピークを迎えつつある今のオカダの存在は新日本プロレスそのものだ。ある意味、50年前の長嶋茂雄と同じくジャンルそのものを背負っている…って、これいったい何のコラムだよみたいなノリで今週も『燃えデブ』が始まった。

 最近はプロレス界も野球界と同じく“アスリート化”が進んでいる。オカダ、内藤、ケニー、飯伏幸太、SANADAとトップ戦線で争うレスラーたちには“強さ”よりも“速さ”が求められる時代だ。身長180cm、体重111kgとあんこ型のマイケル・エルガンですら一昔前のパワー系大型レスラーより圧倒的に動ける。もうドミンゴ・マルティネスが呑気に外野を守っていた時代とは違うのである。

オカダ・カズチカを見て思う野球選手のアスリート化

 ところで、みんな大好き「マルちゃん」を覚えているだろうか? 西武ライオンズが清原和博の巨人FA移籍後に4番ファーストの代役で獲得したドミニカ出身の助っ人。初来日時31歳で公称は185cm、102kgだが映像を確認するとピーク時は120kg近くあったと思う(当時のスポーツ新聞では「体重110キロを超える」と紹介されていた)。

 1年目の97年にいきなり打率.305、31本、108打点の申し分ない活躍で西武優勝の原動力に。DHでベストナインにも選出された。翌98年も30本、95打点の成績を残しチームのV2に貢献。しかし、その巨体から指名打者以外での起用が難しく、日本シリーズでもセ本拠地では代打出場。わずか2シーズンで西武を解雇されてしまう。最近だったら、2年連続で30本90打点をクリアした助っ人をあっさり解雇するなんて考えられないが、外国人枠が少なく今程MLBとNPBの給料格差も大きくなかった当時はまだ助っ人スラッガーに求めるハードルが異様に高かった。近年はあのヤクルトのバレンティンですら、1・2年目ともに31本塁打、80打点前後と考えると、30代前半のマルちゃんもDH専任と割り切ってパ・リーグでプレーし続けられたら息の長い優良助っ人として、2000年代もアレックス・カブレラとツインバズーカ砲を形成していたかもしれない。

巨人時代の清原も、トリプルスリー山田哲人も愛したマルちゃん

 東尾西武を追われ、99年はシーズン途中に長嶋巨人へ入団。守備力よりもとにかく打撃優先の最終兵器スラッガー。やがて第67代4番を務め、その年の夏の巨人クリーンナップは「3番センター松井秀喜、4番レフトマルティネス、5番ライト高橋由伸」である。左翼を守るマルティネスがファールフライを追ってフェンスに激突するも、腹がエアバッグの役割を果たし「ボヨ~ン」と衝撃吸収しつつキャッチしてしまう珍プレーを覚えているファンも多いだろう。どこか憎めないそのキャラクターに加え、人気選手の清原を優先させるような起用法にも腐ることなく自分の仕事を真っ当する人間性はチーム内外からの評価も高く、清原自身も「野球を辞めたらマルちゃんに会いに行きたい」なんて回想。トリプルスリー山田哲人は少年時代の憧れの選手に巨人時代のマルティネスの名前を挙げているくらいだ。01年限りで巨人退団後アメリカでのプレーを挟み、引退後は中日の中南米担当スカウトを務めた。これも松坂大輔の獲得と同じく、アウトレイジ森繁和ルートである。

 ちなみに一応断っておくと、ドミンゴ・マルティネスと現在巨人育成選手のホルヘ・マルティネスは別人だ。新垣結衣と新垣渚くらい違う。って名前の読み方からして違うじゃねえかなんて突っ込みは野暮だろう。

 正直に書くと、俺はマルちゃんをレフト起用するみたいな無謀な長嶋野球が嫌いじゃなかった。いつの時代も、生きる上で“無謀”は時に“希望”になる。

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