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【燃えろ!!デブ野球】第21回 金髪モヒカンの中日ガルシアにパンクラスの秒殺を重ねた、しょっぱい三日月の夜

燃えデブ第21回はセ・リーグ防御率トップを走る金髪モヒカン左腕・中日のガルシア!

吉野家の牛丼をかきこみながら、ハイブリッドレスラー達に思いを馳せる

 ふと80年代後半の長渕剛の映像を見る機会があった。

 87年あたりの『ザ・ベストテン』だと思う。当時30代前半のなよなよした普通の兄ちゃんが「ろくなもんじゃねぇ」と歌う。何よりも切実で圧倒的なリアリティがある。正直、近年の長渕的マッチョイズムな世界観は苦手だ。でも、30年近く前の長渕がマイクを握る姿は今見てもセクシーで格好良かった。

 そんな長渕剛の熱唱に、初期パンクラスを思い出した。単行本『証言UWF 最終章 3派分裂後の真実』(宝島社)の冒頭で船木誠勝が当時のことをインタビュー形式で振り返っている。93年9月21日、東京ベイNKホールで行われたパンクラス旗揚げ戦の全5試合の合計時間はわずか13分5秒。いわゆるひとつのプロレスの向こう側を提示してしまった“秒殺”の衝撃の数々。まだ世の中がリアルファイトに慣れていない時代、観客が息をのんでリングを見つめる静寂の中、第1試合の鈴木みのるvs稲垣克臣から、鈴木がチョークスリーパーで稲垣を締め落とすという凄まじい幕開け。エース船木はその光景に「こんなに殺伐としたものになってしまうんだ。ここまでいっちゃっていいのかな?」という葛藤すら生まれたという。引き締まったハイブリッドボディの若者たちの命を削る攻防戦には高い理想だけじゃなくリアリティがあった。いや有楽町駅前の吉野家で能天気に牛丼をかきこむ俺にパンクラスを語る資格があるのだろうか…なんつって今週もハイカロリーコラム『燃えデブ』が始まった。

今シーズン防御率トップの中日ガルシアはキューバ生まれの100キロ左腕

 さて、突然だが今のプロ野球セ・リーグの防御率トップが誰か知っているだろうか? 巨人の菅野? 阪神のメッセンジャー? いや、中日のオネルキ・ガルシアである。キューバ生まれでアメリカへ亡命した190cm、104kgの大型左腕。来日1年目から先発の一角として6勝1敗、防御率1.69とすでにエース級の働き。5月12日の巨人戦(東京ドーム)では人生初の完封勝利を挙げてみせた。アメリカ時代から被本塁打数の少なさには定評があったが、球場が狭くなった日本でもここまで計53.1回を投げ、わずか1本塁打しか許していない。森監督直伝のチェンジアップを武器に、スポーツ報知の選手名鑑では「キューバの山本昌」と評される背番号70。年俸5000万円とお手頃で89年生まれの28歳とまだ若く、今季からMLB復帰して大活躍する元巨人のマイコラスとほぼ同世代だ。もしかしたら、ネクスト・マイコラスとしてメジャー球団スカウトから注目されるかもしれない。

 その安定の技巧派ピッチとは裏腹に風貌は関口メンディーっていうか、『特攻野郎Aチーム』に出てきそうなド派手な金髪モヒカン。先日のトーチュウ記事によると初体験のトイレのウォッシュレットに「何とも言えない気持ちよさだったよ」とクール尻ジャパンに感激した様子。それにしても人はなぜ「金髪モヒカン」というワードにこんなにワクワクしてしまうのだろう。『北斗の拳』や『マッドマックス』シリーズの見過ぎだろうか。

 恐らく、金髪モヒカンが我々の通常の社会生活からかけ離れているからだと思う。だって明日の朝、いきなり学校や会社に金髪モヒカンで登場したら「あいついったいどうしちゃったの?」と周囲から心配されるはずだ。学ランに金髪モヒカンはそのまんま『ろくでなしBLUES』の世界だし、スーツに金髪モヒカンは『闇金ウシジマくん』である。合コンで登場した男4人全員が金髪モヒカンって、今後永久におネエちゃんたちの女子会でネタになる。

金髪モヒカンで丁寧な投球をするガルシアは今最も球界でセクシーな存在

 日常において、金髪モヒカンはGカップグラビアアイドルと同じでリアリティがない。一種のファンタジーだ。だが、ガルシアの力任せではなく丁寧な投球はプロの世界で生き残るリアルさに溢れている。つまり、一見普通の兄ちゃんが相手を締め落とす秒殺とか、格ゲーをやらせたら右に出る者がいない良家のお嬢さんみたいなギャップだ。そのギャップとは、一種の色気とも言い換えられる。そう、マウンド上のガルシアは今の球界で最もセクシーなのである。

 気が付けば、東京は朝の5時。今、テレビでは投手・田中将大vs打者・大谷翔平で盛り上がるニューヨークからの生中継が映っている。あらゆるデータを駆使するリアリストたちが集うMLBの舞台で、二刀流というファンタジーを持ち込んだ大谷は本当に凄い。

 俺もリアルとファンタジーの狭間で死ぬまで書き続けようと思う。

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