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ファイプロ新作発売の夏、野球少年が西武メヒアを好きになった理由を知った【燃えろ!!デブ野球第30回】

燃えデブ第30回は、居酒屋一休のCM出演も話題の爆裂スラッガー西武メヒア!

俺らはテレビゲームから人生に必要なことを学んだ最初の世代だ

 ついに今月9日に歴史的な1日がやってくる。

 G.G.佐藤の40歳の誕生日だ…とか小ボケをかましてる場合じゃない。8月9日、PS4の『ファイヤープロレスリング ワールド』が発売されるのである。コンシューマー機では13年ぶりの新作となる名作プロレスゲーム。しかも新日本プロレスとコラボで新日の実名レスラー登場だ。中学生の頃、スーパーファミコンのファミスタ、スーパーフォーメーションサッカー、ストツー、ファイプロはゲーム以前にコミュニケーションツールとして機能していた。「お腹減ったらこれ食べなさい」なんてその度に繰り広げられる、友達の母ちゃんが握ってくれたおむすびを食えるのか論争。おぉ…そんな時代が確かにあった。

 ちなみに80年代後半生まれのオカダ・カズチカやSANADAは「プロレスに最初に興味を持ったひとつのきっかけが兄のテレビゲーム」である。少し年齢が上の後藤洋央紀も中学時代、ファイプロにハマりプロレスに夢中になったという。前回のコラムでも触れたが、彼らは金曜夜8時のプロレスTV中継を知らない子どもたちだ。もしかしたら、2018年にファイプロ新作をやって将来のレスラーを目指す少年もいるかもしれない。だってこれだけ暑いとクーラー効いた部屋でゲームしてようって思うもの。でも、大人はそうも言っていられへん。汗水垂らして働いて、洗体エステで疲れを癒し、仕上げは『ゴーゴーカレー』を一気食いだ。いつも思うけど、ここのトッピングのウインナーの焼き加減が絶妙なんだよなあなんつって、今週もファイヤーライティングコラム『燃えデブ』が始まった。

 現代はどのジャンルでも、ゲームを入口にリアルな世界に興味を持つことがある。例えば、10数年前の海外サッカーブーム(街中でも普通にインテルやレアルマドリーのレプリカユニを着た人がいた)のベースにあったのは、サッカーゲームの『ウイニングイレブン』である。みんなウイイレから海外サッカーの選手やチーム名の基礎知識を覚えた。ファミコン生まれ、プレステ育ち。マニアな友達だいたいセガ好き。俺らはテレビゲームから人生に必要なことを学んだ最初の世代かもしれない。

「ウチの子は西武のメヒアのファンでね。いつも遊んでるゲームでよくホームラン打つからだって」

 先日、知り合いのママさんが少年野球でプレーする息子について興味深いことを言っていた。「ウチの子は西武のメヒアのファンでね。球場で見たから? じゃなくて、いつも遊んでるゲームでよくホームラン打つからだって」とカミングアウト。ご存知、埼玉西武ライオンズのエルネスト・メヒアである。198cm、118kg。ベネズエラ出身の巨漢スラッガーは14年途中入団で、いきなり34本塁打をかっ飛ばしタイトル獲得。すると翌春は体重8kg増で来日して球団を唖然とさせた。と言っても、西武のプレー環境を気に入り、3年15億円+出来高という大型契約で残留。西武鉄道で球場入り、「一休行きたい!」のシャウトが話題の居酒屋一休のCMにも登場。両親ともに教師(ちなみにあの村田修一も母親は元教員)で、ブレイク前の山川穂高にアドバイスを送っていたのも知られた話だ。

 皮肉にもその山川の成長で出場機会を失い成績も下降してしまうわけだが、最近は下位打線で起用され、中村剛也とのふたり合わせて通算493本塁打、ホームラン王7度の史上最強8.9番コンビも話題となった。メヒアは近年の『パワプロ』では「弾道4、パワーA」と確かに子どもならたまらないスラッガー仕様。巨人戦を毎晩地上波でやっていた頃とは違って、今はプロ野球中継は大人なら動画配信のDAZNやHuluと契約して自分のスマホやタブレットで見ればいい。野球アプリゲームの『プロスピA』もあるし。ある意味、プロ野球が家族のいるリビングから、個人の手の中へ。でもクレジットカードも携帯端末も持ってないキッズはどうか? 一昔前とは違って気楽に野球を目にする環境ではなくなった。テレビ画面に出力できるAmazonのFire TV Stickだってそこまで普及してないだろう。超便利な時代になった反面、子どもの野球離れの一因はその“便利さ”にある。全然関係ないけど、エロDVD文化の衰退と構図は似ている。

お盆は地元へ帰り、おっさんになった同級生たちと再会して『ファイプロ』をやるのも悪くない

 そこでゲームの出番である。PSの野球ゲーム『パワプロ』とかSwitchの『ファミスタ』最新作を入口に選手を知り、後追いで現実のプロ野球にも興味を持つ現象。しかも今はデータも細分化して選手描写も超リアル。だから、興味の対象を違和感なくリアルな球場へと繋げやすい。そうして、野球少年はメヒアのことを好きになった。いつの時代も、ゲームは少年たちの“社会の窓”だ。20年以上前、俺たちはスーファミから世界の広さや人の母ちゃんが握ったおむすびの味を知った。いつもとは微妙に違うあのおむすびは、自分の家じゃない“外の世界”の象徴だ。

 このエグい暑さの中、あいつら元気にしてるだろうか? 久々にお盆は地元へ帰り、おっさんになった同級生たちと再会して『ファイプロ』をやるのも悪くない。

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