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ベテランは「老いても、時代遅れではない」と学んだ福浦の2000安打達成【燃えろ!!デブ野球】第37回

燃えデブ第37回はロッテ一筋25年で通算2000安打を達成した福浦和也!

今日のコラムの主人公も、子どもの頃はシュワルツェネッガーを楽しんだはずだろう

 俺たちはシュワルツェネッガーベイビーズだ。

 …と意味不明な宣言をかますくらい、歴代のシュワルツェネッガー映画を見てきた。いったい日曜洋画劇場やゴールデン洋画劇場で何回『コマンドー』を楽しんだのだろうか。『プレデター』でシュワルツェネッガーが友人との再会に握手して、そのまま空中でエア腕相撲へ突入という筋肉遊戯を何度教室で真似したのだろうか…なんて過去を『シュワルツェネッガー主義』(てらさわホーク著/洋泉社)を読みながら思い出した。

 そんな第二次ベビーブームからポスト団塊ジュニア世代まで直撃したシュワちゃん(懐かしい)も現在71歳である。アクションスターとしては超ベテランと言ってもいい。さっき夜食に食べた“since1983”と書かれているエースコックのわかめラーメンが発売された翌年に公開されたのが、あの『ターミネーター』である。シュワちゃんもわかめラーメンもシンプルなものは時代を超えて皆美しいのである…なんつって、今週もバトルライターコラム『燃えデブ』が始まった。

 恐らく、あの男も子どもの頃はシュワルツェネッガーを楽しんだはずだ。22日に通算2000安打を達成した千葉ロッテマリーンズの福浦和也である。1975年12月14日生まれの42歳。映画『ラストアクションヒーロー』が公開された93年のドラフトで、64名中64番目のロッテ7位指名で投手としてプロ入り。1年目途中に野手転向すると、イースタン最終戦で右中間を破るプロ初安打。2年目を迎える95年週刊ベースボール選手名鑑号を確認すると、19歳のまだ何者でもない背番号70の自信なさげな顔写真が確認できる。

イチローが去った2001年パ・リーグで首位打者に輝いたのが、打率.346を記録した8年目の福浦だった

 年俸420万円、好きな芸能人は内田有紀、趣味は貝の収集と音楽鑑賞(特に森高千里)。…って普通の浪人生のようなプロフィールだが、選手評には「和製大砲への可能性を感じさせた。課題となるのは守備と打撃の確実性だ」と書かれていて、若手時代はパワーヒッターとして期待されていたことに時代を感じさせる。全然関係ないけど、イチローの好きな芸能人が鈴木杏樹というのも平成7年ぽい。もちろん中山美穂や西田ひかるも各球団で大人気だ。となると松井秀喜の好きな芸能人&女性のタイプは…「色白でポッチャリ型」って生々しすぎるよゴジラ! デブ野球かよっ! とか選手名鑑遊びをやっている内に、やがて時は経ちイチローは7年連続首位打者の大記録を置きみやげにメジャーへ。その絶対王者が去った2001年パ・リーグで首位打者に輝いたのが、打率.346を記録した8年目の福浦だった。

 ロッテ一筋25年。1軍公式戦初出場はプロ4年目の苦労人。42歳9カ月の2000本到達は史上2番目の年長記録だった。しかし2011年を最後に出場100試合を切り、長打は激減、打率も2割台前半が珍しくなくなった。これは同じベテラン選手の巨人・阿部、阪神・鳥谷らにも言えることだが、入団時から同一チームに在籍し大きな貢献をしてくれた偉大なプレーヤーも、晩年の記録達成時にはすでに歳を重ね全盛期と比較したら衰えている。だって、超人的なプロ野球選手もサイヤ人じゃなく人間だから。誰だって歳は取る。

 おじさんはツライよ…。30代後半や40代のベテランの悲しい宿命。チームが負け続け成績が残せないと、君は古いよと蔑まれ、どうしてもそのポジジョンを奪い取れる若手不在が語られてしまう立場にある。十数年前は日本を代表する安打製造機・福浦も、今季は打率.210、1本塁打、11打点、OPS.505。記録達成の翌日には首痛で登録抹消された。まさにギリギリでの2000安打到達。

ここ数シーズンの福浦のプレーはまるで、近年のシュワルツェネッガー映画のようだった

 なんだか、ここ数シーズンの福浦のプレーはまるで、近年のシュワルツェネッガー映画のようだった。全盛期と比較したら当然、肉体の状態は落ちている。世界的大ヒットのような大作とも遠ざかった。それでもシュワちゃんは『ラストスタンド』や『大脱出』といった作品で渋い存在感を発揮している。それを見て、昔からのファンは「おおっ、シュワルツェネッガーはまだ頑張ってるんだな」と元気をもらう。まるで、マリンスタジアムで背番号9のヒットに「よし福浦、俺ももう少し頑張るよ」と勇気をもらうようにだ。

 彼らは流れた膨大な時間をエンタメとして客に提示する。若僧には出せないプロの色気。シュワルツェネッガーも福浦も超ベテランになりながらも現役のステージに立ち続けている。俺らもこんなクレイジーなおじさんになれるだろうか? もちろん人生山あり谷あり、称賛だけでなく多くの批判もあった。それでも現在進行形の“今”から逃げなかった男たち。

 2015年公開の『ターミネーター:新起動/ジェニシス』で、老化した旧式ターミネーターT-800を演じるシュワルツェネッガーは、激しい戦闘でボロボロになりながら、こう言ってみせるのだ。

「オレは老いたが、時代遅れではない」と。

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