両国でオカダVSザック・セイバーを見ながら考える

　古すぎて新しく見えるモノ。

　勘違いしないで欲しいが、90年代後半の青木裕子や大原かおりのグラビアの話でも、昼飯に食ったいい感じにくたびれた天丼屋の報告でもない。新日本プロレスだ。両国でのオカダ・カズチカ対ザック・セイバーJrのIWGPヘビー級選手権を見ながら、そんなことを考えた。V11王者オカダをあと一歩まで追い込んだザックの7822種類と豪語する関節技の数々。黒パンツ、黒レガースのシンプルなリングコスチュームのサブミッションマスターは、復帰を目指しながらLA道場ヘッドコーチを務める柴田勝頼の穴を見事に埋めている。派手な技やコスチュームが多い現代の新日において、柴田の古き良きストロングスタイルはレアだった。昭和からのオールドファン受け皿としても機能。そして今、イギリス人で鈴木軍に所属するザックがその枠を継承しつつあるわけだ。以上！…なんて唐突に柴田のモノマネをかましつつ今週も『燃えデブ』が始まった。

ドラ１ルーキー鈴木博志が巨人相手に堂々の本拠地デビュー

　先週4日の中日対巨人戦、ドラ1ルーキー鈴木博志が本拠地ナゴヤドーム初登板でジャイアンツ上位打線相手に3者連続三振の完璧な投球を披露した。この日最速153キロのストレート（プロ初登板の広島戦では155キロを計測）に、往年の与田剛の姿を重ねたファンも多いのではないだろうか。90年4月7日の開幕戦で延長11回の一打勝ち越しのピンチに登板すると見事2三振の無失点デビュー。ベンチの燃える男・星野仙一監督の咆哮、マウンドに仁王立ちする若き日の与田の姿は強烈だった。この年、背番号29は31セーブを上げ最優秀救援投手と新人王に輝いたが、同じくドラ1右腕の鈴木にはその再来を期待したい。8日現在、4試合登板でまだ無失点、わずか被安打1、12打者に対し5奪三振と、この男がセ界の新人王レースをリードする可能性も高い。

　…って、確かに21歳の鈴木博志は181cm、95kgの立派なガタイだけど、デブと言うより社会人ヤマハ時代に右肘のリハビリで地道にウエイトトレーニングを続け意図的に増量したのは知られた話だ。なのになぜ『燃えデブ』に登場するのか？　それは各社の2018年プロ野球選手名鑑を見れば答えは明らかだ。ほぼすべてに共通で書かれているのが『メジャーを代表する抑え投手クレイグ・キンブレル（レッドソックス）に憧れ背番号46を希望』のエピソード。そう、ここまでは俺もドラフト時の報道で知っていた。今回の注目はそのあとで、各社の自由すぎる鈴木紹介文である。

大食漢でラーメン替え玉17玉、あんぱん顔で菓子パン好き

「6面立体パズルを得意とし、自転車、ゴルフ、バスケットボール、映画鑑賞、描画、工作など多趣味な一面も」（日刊スポーツ名鑑）、「大食漢でラーメン替え玉17玉の記録を持つ」（Slugger特別編集名鑑）、「あんぱん顔で菓子パン好き」（報知名鑑）…ってラーメン17玉も食うなら他に違うもの注文した方がいい気がするとか、もはやスープなくなるでしょとか、あんぱん顔と菓子パン好きは関係ないだろう…なんて突っ込みどころ満載。

　なんか古すぎて新しいこの感じ。平成初期あたりまで球界では大食い伝説や酒豪烈伝がよく語られてきた。いやいや、それ周囲の記者が悪ノリで盛ってるはずと思って、念のため本人のTwitterアカウント（トップ画はもちろんキンブレル）を確認してみる。プロ入りしてからほぼ更新されていないが、2016年8月6日には「今日の夕飯！ すき家、丼2セット！」と画像付きツイート発見。牛丼大盛り、マグロ丼、サラダ、生卵、とろろ、味噌汁と圧巻の量をサクッと平らげる男の嗜み。この世に“丼2”というパワーワードで落ちないおネエちゃんはいないだろう。どうだ、君も『すき家』で丼ツー食える男にならないか？　いいか、ストツーじゃない丼ツーだ。そう優しく語りかけてくるかのような男気溢れるツイートだった。

　鈴木イチローに名前の普通さでは負けていない鈴木ヒロシ。野球界のSUZUKIブランドはまだまだ健在である。ではラストはもちろん鈴木みのるのこの言葉で終わりにしよう。

　「鈴木軍、イチバーン！」
　

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