Lifestyle

【燃えろ!!デブ野球】第24回 あの頃、僕らは井川慶からプロ野球とサッカーW杯の両立は可能だと教わった

燃えデブ第24回は現在セ・リーグ最後の20勝投手、球界きってのゲーマー&サッカー好きの井川慶!

スマホは、メジャーリーガーもレジェンドプレーヤーも現役選手もすべてのプロ野球選手をフラットにしてしまった。

 知り合いの36歳営業マンは普段から雑誌の付録の腕時計をしている。

 smartのようなファション誌に付いてるような例のアレだ。理由はキャバ嬢は客の腕時計と靴を見るとどこかで聞いたから。「ってことは、このプラスチック製の死ぬほどペラペラな腕時計でモテたら男として勝ちだよね」というロジックらしい。完全なるアホである。でも、気持ちは分かる。人には誰にだって分かっちゃいるけどやめられないことがある。なんでそんなことをするのか? いったいなんのために? なんて思いながら、俺もロシアW杯を見る日々だ。

 だったらどこかの媒体で試合レポート原稿でも書けばと言われるが、そんなことは一切しない。昔、制作会社の下っ端で数年間サッカー関連のデザイナーをやったが楽しむどころじゃなかった。もうW杯に対して何の責任感も使命感も抱えたくない。とにかく仕事じゃなく無意味に見ると決めてテレビの前に座る。で、気になった選手をメモり、『ウイニングイレブン2018』で実際に使用して遊んでみる。ってなんやねんこの絶望的なルーティンは…って自覚しているが死ぬほど楽しい。例によっていきなり話は飛ぶが『クラシックゲーム a Go Go』(株式会社カンゼン)という新刊の中で興味深い記述があった。

 「ミニファミコンやミニスーファミの発売で化石になりかけていた過去のテレビゲームは蘇生し息を吹き返した。おおげさに言えば、2017年からゲームの歴史は変わった。80年代から90年代のゲームもゼロ年代以降のゲームと同じまな板にフラットに載せられ、遊ばれ、愛される対象になった。もう歴史は断絶していない。一貫している」

 なるほどなと思った。俺もPS4でウイイレをやりながら、3DSでニンテンドーeショップから購入した88年発売のファミコンゲーム『忍者龍剣伝』をやったりしている。つまり、2018年と1988年が同じ日常にあるわけだ。最近の90年代後半生まれのプロ野球新人選手も「Youtubeで観た江川卓さんが目標です」みたいな世代が出てきている。スマホは、メジャーリーガーもレジェンドプレーヤーも現役選手もすべてのプロ野球選手をフラットにしてしまった。というわけで、ロッテリアの絶品チーズバーガーと、サッポロポテトバーべQあじ風味のふるポテもフラットに胃袋に入れて、今週も人生のハットトリックコラム『燃えデブ』が始まった。

セ・リーグ最後の20勝投手は2003年の井川慶である

 ってすでに気付いている読者もいると思うが、本題に入る前にすでに1000文字ほど消費している。あんたサッカーを追うのに夢中で、野球見ている余裕がないの? っていや余裕はないが、その分パッションはある。時間はなくても、夢がある。なんてまるで西野ジャパンを擁護するような苦しいエクスキューズをかましつつ、今回紹介するのは井川慶だ。06年オフのニューヨークヤンキース移籍後は完全に迷走してしまった感のある野球人生だが、現在セ・リーグ最後の20勝投手は2003年の井川である。

 79年茨城県生まれ、97年ドラフト2位で阪神入りした超高校級左腕は02年から5年連続二桁勝利、その間4度の200投球回クリアと虎のエースとして君臨した。なお2002年オールスターファン投票では川上憲伸や上原浩治を抑えて、先発投手部門1位で選出されるなど、人気と実力を兼ね備えた00年代を代表する投手のひとりだ。

 もともとメジャー志向が強く、06年オフに希望が叶いポスティングでヤンキース移籍。だが、約30億円の落札額に見合う結果を残せず現地メディアからバッシングを食らい、12年開幕直前にオリックスで日本復帰するも、186cm、96kgのちょいポチャ体型で投げる球は全盛期とは程遠く15年限りで戦力外通告。17年には独立リーグの兵庫ブルーサンダーズでマウンドに上がり、11勝0敗、防御率1.09、94奪三振で投手タイトルを独占して格の違いを見せつけながら1年限りで退団した。井川慶オフィシャルサイト『K’s SELF』によると、先月更新された最新記事で、まだ現役選手であること、今年3月に徳島県の阿南市で行われたプロ野球OBオールスターゲームで139キロの直球を記録したことが記されている。

日韓W杯のとき、自他ともに認めるサッカー好きとしてスポーツ新聞にコメントを出した井川

 
 ちなみに2012年3月の本人メッセージでは、練習後の気分転換のゲームセンター通い話から、衝撃のエピソードを公開。『自分のお気に入りは「WCCF」というサッカーゲームです。そのデータ通信でのプレーを楽しんでいますが、なんと、128チームが参加したトーナメントで、自分が優勝してエリアチャンピオンになってしまいました(笑)』なんつっていきなりカミングアウトをかまして話題になった。

 このWCCFとは『WORLD CLUB Champion Football』の略で、世界中のサッカー選手カードを集めて、巨大な筐体の上でフォーメーションを組み、自分だけのチームを作り育てていくという恐ろしく時間と金のかかるゲームとして有名だ。そのハードなサッカーゲームで『関東エリアを代表して臨んだ全国大会では、さすがに予選リーグで敗退してしまいましたが、エリアチャンピオンになって、少しだけ嬉しくなりました』と笑うサウスポー。実はこの10年前に壮大な前フリがあった。2002年日韓W杯のグループリーグ初戦で日本がベルギーに引き分けた翌6月5日、長嶋さんや王さん、当時阪神の星野監督といった球界重鎮に混じって、自他ともに認めるサッカー好きとして井川のコメントもスポーツ新聞に掲載されていたのだ。

 「もちろん(練習から)帰って見ましたよ」

 凄い、プロ野球とワールドカップの両立、野球とサッカーゲームの両立を諦めないブレない姿勢は10年間変わっていなかったわけだ。

 そして俺らは4年に一度、まるで『こち亀』の日暮熟睡男ように、ワールドカップが来る度に井川慶を思い出すのである。

<関連記事>
【燃えろ!!デブ野球】あの頃、僕らはみんなデブだった
【燃えろ!!デブ野球】第10回「外道さんの本は、焼きたてのステーキと吉永幸一郎のホームランの匂いがした」
【燃えろ!!デブ野球】第11回「タイロン・ウッズのホームランはまるで上質なポップソングのようだった」
【燃えろ!!デブ野球】第12回「『みなおか』の最終回に、落合博満の“オレ流”を見た」
【燃えろ!!デブ野球】第13回「アジャ井上の2打席連発弾!いつの時代もデカいことはいいことだ」
【燃えろ!!デブ野球】第14回「君も剛腕ルーキー中日・鈴木博志のように『すき家』で丼ツー食える男にならないか?」
【燃えろ!!デブ野球】第15回 キャベツ太郎を食べながらアマダーとベイダーを想った月曜日
【燃えろ!!デブ野球】第16回 平成のオカダ・カズチカ”に“昭和の江川卓”を重ねた甘い夜
【燃えろ!!デブ野球】第17回 山川穂高、大型スラッガーは自身のステーキ弁当が発売されてからが勝負だ!
【燃えろ!!デブ野球】第18回 オカダ・カズチカの姿に棚橋を重ね、オカモト・カズマの一発に江藤智を思い出した
【燃えろ!!デブ野球】第19回 オリックス澤田圭佑のようになりたくて、猛牛コロッケを食べたあの日の京セラドーム
【燃えろ!!デブ野球】第20回 チーズハンバーグの香りに小笠原慎之介のヒールターンを妄想した
【燃えろ!!デブ野球】第21回 金髪モヒカンの中日ガルシアにパンクラスの秒殺を重ねた、しょっぱい三日月の夜
【燃えろ!!デブ野球】第22回 牛たれカツ丼を食べながら、「二塁マギー」を忘れないでいようと心に誓った京セラドーム
【燃えろ!!デブ野球】第23回 右翼ペゲーロのズンドコ守備にフリオ・ズレータを思い出した東京の夜

プロ野球死亡遊戯