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菊池雄星の朴訥な英会話に仕事始めの匂いを感じた正月【燃えろ!!デブ野球】第51回

燃えデブ第51回はポスティングでのマリナーズ移籍が決まった菊池雄星!

親族の集まりで、なんとなく場を繋ぐ6回3失点ピッチャーみたいなユルく堅い正月テレビ番組の偉大さを痛感した。

 年末年始のパパは大変なんだな。

 知り合いから、お母さんが大変というのはよく耳にする機会はあったが、親父が大変というのは自分で体験するまでは分からない。だって男同士で飲んでもそういう生々しいファミリー話にはならないから。まったくキャラじゃないけど、個人的に子どもができて初めて迎える正月はハードだった。超混雑する駅構内を右手に折り畳んだベビーカー、左手にはオムツを含む大量の荷物を持ち人とぶつからないように平成最後のムーンウォーク。例え、気合い入れて新幹線は足元の広いグリーン席を確保しようと、移動には超絶時間が掛かり、仕事の実績や会社の肩書きなんてクソ程も関係ない。思わず、長蛇の列のエレベーター乗り降りですれ違った親父同士「お、お疲れさまです」なんて無言のアイコンタクトするあの感じ。

 さらにフリーランスあるあるで、ほとんど会ったことない親戚に遭遇したりすると「フラフラしてないで早く会社に入って定職に就かなあかん」とか説教されちゃう諸行無常。顔もよく知らない嫁さんの親族の集まりを冷静に見ると、0歳から80歳くらいまでの老若男女共通の盛り上がる会話ネタなんかあるはずもなく、なんとなく場を繋ぐ6回3失点ピッチャーみたいなユルく堅い正月テレビ番組の偉大さを痛感した。NHK紅白歌合戦なんてその典型だろう。とかほざきながらスライを聴いて、生ガキや刺身を食い続けた結果、年明けから食あたりで寝込むことになった。正月のパパはちょっとしんどい。やっぱ今年も健康第一だよなんつって白湯を啜りながら、2019年もクオリティスタートコラム『燃えデブ』が始まった。

日本人選手のメジャー移籍にも、ポスティングにも、大型契約にも、我々は平成30年間を使って「慣れた」のである。

 さて今年一発目の野球界のビッグニュースと言えば、埼玉西武・菊池雄星のシアトル・マリナーズ移籍だろう。最大で7年総額1億900万ドル(約120億円)の大型契約……なんだけど、過去のポスティング移籍のケースと比較したら世の中的にはあまり話題になってない気がする。アメリカの国務次官補までもが交渉の行方を報道陣に逆取材したという06年12月の松坂大輔のケースは特殊だとしても、ダルビッシュや田中将大は野球ファンを超えた注目を集めたし、大谷翔平の去就もNHKがトップニュースで報じるレベルで社会的な感心ごとだった。マエケンにしても地元広島ではスーパースターである。もちろん、菊池は17年に16勝&防御率1.97の好成績でタイトル獲得、18年も14勝とこの3シーズン計42勝を挙げた球界を代表する左腕だ。しかも、入団会見ではメディアとの質疑応答をほぼ英語で答えてみせるなど、報道陣への対応も評判のグッドガイでもある。多くの男たちはあの朴訥な英会話にビクっとしたのではないだろうか? そこに努力の跡があったから。オレ、寝正月していていいのかなって。

 それなのになぜ注目度が……って要は日本人選手のメジャー移籍にも、ポスティングにも、大型契約にも、我々は「慣れた」のである。平成30年間を使って慣れた。まるでハバネロの辛さを受け入れるようにだ。91年6月生まれで27歳の菊池にとって、3歳の時に野茂が、10歳の時にはすでにイチローが渡米していたことになる。子どもの頃から巨人ファンクラブに入るほどのG党だった少年でも、環境的にはナチュラルにメジャーリーグの映像で育った世代だ。夢というより目標としてMLBがあった。だから一時は高卒時に海の向こうを目指したし、英会話もマスターしたのだろう。

 そう言えば、年末の紅白歌合戦で話題になった米津玄師も菊池と同じ91年生まれの27歳だ。しかし、クライマックスに主役を張り、45.3%の歌手別の瞬間最高視聴率をかっさらっていったのはサザンオールスターズご一行だった。あの瞬間の62歳・桑田佳祐と64歳・松任谷由実の生命力は半端なかった。同じように野球界でも60歳・原辰徳が正月からスポーツ新聞各紙を賑わせている。「平成30年間を生き抜いた昭和の大スター」の底力を舐めてはいけない。だからこそ、米津玄師や大谷翔平や広瀬すずといった「平成のスターが次の時代をどう生き残るか?」が楽しみでもある。

しれっと15勝して、今年の大晦日の紅白ゲスト審査員に菊池雄星が呼ばれていたら最高だ。

 で、ユーセイ菊池だ。仮に渡米1年目から10勝前後しても、メディアでそこまで騒がれるようなことはないだろう。でも、それは日本野球界にとって偉大なる前進だと思う。メジャーで二桁? そらするでしょってことだから。正直、大谷翔平という100年に1人の逸材の出現で“日本人メジャーリーガーに対する期待のインフレ”が起きて、見る側も感覚が麻痺しちゃって、もう何が起きても驚かない損な空気すら漂っている。「全米を震撼させた大谷ショック後の日本人スターターのリスタート」という死ぬほどヘビーな役回りを花巻東高の先輩でもある菊池がやるのも運命を感じてしまう。しれっと15勝して、今年の大晦日の紅白ゲスト審査員に菊池雄星が呼ばれていたら最高だ。

 でもそう言えば、昔はよくあった「通用するか? しないか?」みたいな議論はほとんど聞かなくなったよね。MLBとNPBの年俸格差みたいな視点もみんな飽きている。別に平成の終わりとは関係なく、メジャーとの距離感が次のターンに入ったのは確かだと思う。本当に俺らが子どもの頃とは色々変わったよ、プロ野球の立ち位置や父親の役割も。だから、変わらないサザンやユーミンに人々は熱狂するのかもしれない。

 ゴメン、さっきからLINEの着信が半端ない。どうやら巨人のカープへの人的補償の件らしい。さあ、仕事始めだ。なんつって一瞬の正月を終え、激闘を終えたパパたちもいつもの日常に戻っていくのである。

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