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日米野球でゴジラ松井の「真っ当さ」に偉大なる“受けの美学”を見た【燃えろ!!デブ野球】第44回

燃えデブ第44回は日米野球MLBチームのコーチで来日した松井秀喜!

体調不良になって想う。マンネリと言われようが60歳までリングで戦い続けたジャイアント馬場は偉大だと。

「会社がイヤなら辞めてさっさと条件のいいところへ移ればいい。オレは会社の待遇に納得しなかったらいつでも辞めてやる」

 藤原喜明は『週刊ファイト』とUWF(波々伯部哲也/双葉社)の中でそう言っている。その通り、腕一本で団体を渡り歩いてこそ真のプロレスラーだ。プロライターだって媒体の方向性が嫌だったら、原稿料が不満だったら、自ら各媒体と交渉して連載移動すればいい。なんて俺も普段はストロングスタイルで仕事をしているわけだが、先週は数年ぶりに風邪で寝込んだ。マジすんません、重要なインタビューや日米野球原稿を飛ばしてしまい、さすがに反省した。で、2日ほどひたすら寝て、2日目の深夜にチキンラーメンを食った。なぜならチキンラーメンの一見特徴のないあっさりした味はノーマルな日常の象徴だからだ。

 これが最近よくある某名店を再現したカップ麺とかだとさすがに胃にもたれるし、近所の行列ができる豚骨ラーメンも病み上がりには重い。当たり前に過ぎ行く毎日は意外と馬鹿にできないと体調を崩すと実感する。あぁ今日のランチも牛丼かよ……ってその牛丼並盛りすら身体が受け付けない悲劇。学生時代は風邪引いたら休めるラッキーとか思ってたのに、社会人は発熱で寝込んだりすると世界から置いてけぼりを食らった気分になっちまう。フリーの物書きが体調不良で取材にいけませんなんて数回繰り返したら一瞬で仕事を失うだろう。

 だから、週刊少年ジャンプという大舞台で『こち亀』を休まず書き続けた秋本治は偉大だ。ジャイアント馬場は全日本プロレスという当時の国内有数の巨大団体で60歳までリングで戦い続けた。仮に今の新日で現在59歳の前田日明がエキシビジョンマッチをすると考えたら、馬場の狂気がよく分かる。時にマンネリと言われようが何かを続ける根性を舐めてはいけない。おい舐めんなよコノヤロー元気ですかーなんつってチキンラーメンバタコをかっ食らいながら、今週もユニバーサルコラム『燃えデブ』が始まった。

我々野球ファンは松井秀喜の器のデカさに感謝すべきだ。

 さて、日米野球真っ只中だが、今回のMLB選抜チームの目玉は松井秀喜コーチだ。えっ? いやそれでいいのかこのイベントって、マジもんの超オールスター豪華メンバーが来日していた時代とは選手の契約の仕組みも変わったし、動くマネーの金額も違う。しかもお祭りの日米花試合ではなく、いまや侍ジャパン強化試合の位置付けだ。観光気分の親善試合モードのメジャー軍団とテンションに差があるのはどうしようもない。ガチンコ要素を求めた代償に“ベースボールフェス感”は減ってしまった。仕事終わりに軽い気分で顔を出した飲み会の席が、ガチの合コンモードだったら噛み合うわけがないあの感じ。勘違いしないで欲しいが、だから今の日米野球はダメじゃなくて、あらためて松井秀喜は凄いと思った。

 だって、ゴジラ松井がヤンキースのユニフォームを着て参加してなければ、テレビもスポーツ新聞もこの日米野球をどう報じていいいのか路頭に迷っていたはずだ。とりあえず「原と松井の因縁」とか、「松井から見た柳田のパワー」みたいな切り口が可能になる。一塁コーチャーに立てば一般のプロ野球ライトユーザーピープルも「あぁ松井が来てんだ。白髪増えたな」と懐かしい野球の入口になる。

 しかも、松井は金曜の試合が終わった直後の深夜に日テレ『news zero』に出て、温活カフェについてコメントを求められ穏やかに答え、有働アナの隣でなんだかよく分からない耳マッサージまで付き合ってみせた。伊達に現役時代にミスターの「4番1000日計画」という半端ないプレッシャー案件を引き受け、契約更改であらゆるカメラマンの無茶振りに対応しポーズを決め、東スポのAVネタまでしっかり対応してみせた男の懐の深さは違う。もしも、現ヤンキースGM付特別アドバイザー松井が「アメリカで楽しんでるしオレは日米野球の広告塔みたいな面倒くさい役割はゴメンだよ」とバックレていたら、どうしようもなく盛り上がらないイベントになっていただろう。我々野球ファンは松井の器のデカさに感謝すべきだ。

優等生の松井は、いわば、絶滅危惧種の“受けの美学”を持つプロ野球選手である。

 振り返ると、90年代にイチローや中田英寿といった新世代のメディアスターが登場した時、松井秀喜の存在はどこか古臭く見えたものだ。いかにもプロ野球選手的な風貌や“ゴジラ”という昭和風ニックネーム。尖っていたヒデやイチローと比べると、黙々と連続試合出場を続け巨人の4番を打つ背番号55はファンには退屈に映ったこともあった。けど、今、松井が持つブレない“真っ当さ”は新鮮だ。ファンにとって真っ当さとは安心感とも言い換えられる。SNSで選手自らいくらでも己の意見が発信できる世の中で、ゴジラがTwitterやインスタに燃えている姿は想像できない。どうぞ皆さん好きに書いてくださいと。いわば、絶滅危惧種の“受けの美学”を持つプロ野球選手である。

 確かに天才アントニオ猪木や革命家イチローは歴史を変えた。けど、その根っこで同時代にジャンルを支えたのは安定感の馬場であり、優等生の松井秀喜だと思う。毎日学校に行く、会社へ行くみたいな継続性を舐めてはいけない。

 偉大なるマンネリ。そこにいるだけで周囲に与える安心感。だから今夜も、いつもの味サイコーなんつって病み上がりの俺は55番とチキンラーメンに感謝するのである。

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