【燃えろ!!デブ野球】第28回 部屋とカップ焼そばと森友哉
燃えデブ第28回はオールスターMVPに輝いた、いまや貴重な豆タンク型スラッガー森友哉!
汗だくになってカップ焼そばを食べるといつでも19才の夏に戻れる
あのレコードを聴けば、いつでもどんな時でも14才の気持ちを呼び起こせる。
かつて甲本ヒロトは名曲『十四才』の中でそんな心情を歌った。このニュアンスを借りると、あらゆる男にとって「汗だくになってカップ焼そばを食べるといつでも19才の夏に戻れる」のはなんでだろう? 深夜3時にプロレスを見ながら食うカップ焼そばは学生時代のワンルームマンションの一室の風景と同化している。腕時計だ、車だと取り繕ったところで結局俺らの原点はカップ焼そばである。偉そうに説教してる部長も、人生を語る担任の先生もとどのつまりカップ焼そばブラザーズだ。
…なんてコインロッカーベイビーズ風にスカしてみても、ひとり食べるのはカップ焼そばという現実は人生に対して謙虚にさせてくれる。最近はサッカーW杯が終わり、寝る前に新日本プロレスワールドでG1 CLIMAX 28を眺めて熱帯夜をやり過ごす。ずっと応援してきた柴田勝頼が欠場中の今、個人的な注目はSANADAだ。主力レスラーで伸び代と底知れぬポテンシャンルを秘めているのはこの男だと思う。2年前の両国国技館で新日のリングに上がったときは同学年のオカダのライバル役が期待されたが、IWGPタッグ戦線にこそ絡むもここまでユニットリーダー内藤哲也の引き立て役のような立ち位置。だがオレは内藤のかませ犬じゃねえ状態からの飛躍は近い気がする。それだけ最近のSANADAの戦いは質が高い。あ、マイケル・エルガンだ。そう言えば、エルガンって全体のフォルムが埼玉西武ライオンズの森友哉に似てるよね…なんつって例によってマサ斎藤の捻り式バックドロップのようなパワフルさで今週も監獄コラム『燃えデブ』が始まった。
松井秀喜クラスに打ちまくった高卒スラッガー森友哉
京セラドームで開催されたオールスター第1戦を観戦してきたが、MVPは松坂大輔から3ランを放った森だった。170cm、80kgの球界絶滅危惧種の豆タンク体型から凄まじい打球をかっ飛ばす高卒5年目の左打ちスラッガー。ルーキーイヤーの14年シーズンは高卒新人としては46年ぶりとなる3試合連続本塁打を記録し、41試合に出場して打率.275、6本塁打、15打点、OPS.945と1年目としては充分すぎる成績を残した。翌15年は138試合で17発、68打点。平成球界でプロ2年目までにこれだけ打ちまくった高卒野手は松井秀喜と森友哉くらいのものである。ついに阿部慎之助以来の“打てる捕手”誕生と思いきや、外野起用や死球を受けて左肘を骨折など回り道をしてしまったが、今季は捕手と指名打者をこなしつつ強力打線の5番に定着。78試合で打率.268、9本、47打点、OPS.799という数字を残している。
現在ホームランと打点で打撃二冠の4番山川と組むクリーンナップ、さらに21日の楽天戦では5本塁打を放った棚橋・中邑・オカダじゃなくて、浅村・中村・岡田のチーム大阪桐蔭OBの一員としても注目の22才。えっまだ22才(誕生日は8月8日)なのか森はと驚愕しつつ、Slugger特別編集の選手名鑑では17年が「虫嫌い。一人暮らしを始めたが松屋のカレーギュウ&豚汁中心」、18年は「性格はやんちゃで球団からオラついた歩き方を注意されたことも」と完全なネタ枠をこなすキャラの幅広さも併せ持つ。
森のスイングには22才の勢いと喜びと切なさが詰まっている
俺は埼玉出身でテレビ埼玉のTVSライオンズアワーとプロレス中継とおとなのえほんで育った世代なので、西武伝統の「LDS」(ライオンズ・デブ・スラッガー)の系譜はいまだに気になってしまう。田淵幸一、大久保博元、今久留主成幸、ドミンゴ・マルティネス、中村剛也、山川穂高。あれっ途中のなんやねん…なんて突っ込む隙すら与えない中西太や豊田泰光の西鉄ライオンズ野武士軍団時代から続く、この栄光のLDSを継承するのは間違いなく背番号10だろう。近鉄バファローズや阪急ブレーブスや南海ホークスの持っていた色は球団消滅したり親会社が代わる内にほぼなくなってしまった。例えば南海とソフトバンク、近鉄と楽天やオリックスは親会社のカテゴリーやイメージからして違いすぎる。けど、途中太平洋クラブやクラウンライターを経由して西日本鉄道と西武鉄道は栄光に向かって走るあの列車を運行し続けているのである。
球場で見る森の世界に向けてふざけんじゃねえよコノヤロー的な豪快なフルスイングは、22才の勢いと喜びと切なさが詰まっている。1987年日本シリーズで歓喜の涙を流した清原和博、そして2018年夏の「部屋とカップ焼そばと森友哉」。この限りなく透明に近い青さこそ、ライオンズブルーの危うさであり魅力だと個人的には思う。
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