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2年目の清宮幸太郎に「現代のスター候補のハードさ」を見た【燃えろ!!デブ野球】第53回

燃えデブ第53回はプロ2年目を迎える日本ハム清宮幸太郎!

カプセルホテルで、理不尽にキレたり、唐突に説教するようなおじさんに共通していたのは、圧倒的な「寂しさ」である。

 若い頃、アルバイトの店員にブチギレるようなおじさんにはなりたくなかった。

 大学時代、繁華街のカプセルホテルでバイトをしていたことがある。来る客はだいたい酔っ払って終電を逃した中年男性とか、出張で宿泊費を安く上げて差額がほしいサラリーマン。っていうか、基本的におじさんだ。そこは女性客は泊まれなかったので、施設内では見栄を張る必要もなく、人間性がむきだしになる。フロントでチェックイン時に理不尽にキレたり、唐突に説教するようなおじさんに共通していたのは、圧倒的な「寂しさ」である。
 
 先日、例によって平均年齢38歳くらいの中年男4人で新年会がてら飲んだ。場所は御茶の水のごく普通の居酒屋。野球界ゴシップ話で数時間飲んで食って盛り上がり、自然とラストは「締めにうどんか雑炊でも」となる。メニューを見たら蕎麦があったので、「じゃあ最後はソバ4人前」と誰かが注文する。で、運ばれてきたのが大盛りの焼そば4人前だった。ってなんでやねん。部活帰りの高校生じゃないんだから。そんな間違いある? でも、ここであの海外留学生らしきバイト男子にキレたら、彼は店主からも怒られてしまうだろう。俺らが我慢してこの焼そばを食えばすべてが丸く納まる。食ったね、みんな黙々と焼そばを食った。あぁ彼らと友人で良かったと思ったよ。だって、焼そば片手にキレるような奴はいなかったから。俺は必死に焼そばを啜りながら、おじさんの寂しさの正体について考えたんだ……なんつって今週も中濃ソースコラム『燃えデブ』が始まった。

時の流れは早い。去年の今頃は、とにかく高校通算111発の清宮幸太郎フィーバーだった。

 プロ野球界はキャンプイン前にルーキーたちが話題だ。今オフの主役は中日の根尾昂と日本ハムの吉田輝星だろう。トーチュウではもちろん根尾情報が連日報じられ、吉田も「高卒ルーキー63年ぶりの開幕投手も」なんてニュースが一面を飾る。ついでにソフトバンクのドラフト3位・野村大樹の大食い伝説も東スポを賑わす。幼少期にあまりの底知れぬ食欲を心配した両親に病院へ連れて行かれ、中学時代は『餃子の王将』でギガントチャーハンとギガントラーメンを完食。さすが早実・清宮(184cm、102kg)の後輩……って、時の流れは早い。去年の今頃は、とにかく高校通算111発の清宮幸太郎フィーバーだった。

 昨夏、日本ハムと巨人のイースタンリーグ公式戦が開催される鎌ヶ谷球場へ行ったことがある。「3番レフト」で先発出場した清宮が打席に入る際、前の席のネクタイ姿の男が写真を撮ろうとスマホを構える。バックスクリーン横にホームランを叩き込んだら、立ち上がって拍手だ。どう見ても営業外回り中にサボってる感バレバレだが、それはどんな記事よりも、清宮という長距離砲の魅力を伝える光景だったように思う。

 もしかしたら、甲子園のアイドルをプロでも安易に持ち上げ過ぎと訝しむ野球ファンもいるかもしれない。でも、チヤホヤされるのは最初だけだ。だから始まりくらい盛り上げてもいいんじゃない? 次から次へと新しい選手が入ってくる。3年、5年と時間が経過して、注目のど真ん中に居続けられる選手は数十人にひとりだろう。その清宮も最近は右手首違和感と栗山監督から喝以外はニュースも激減してしまった。プロ1年目の昨季は1軍180打席で7本塁打。ドラフト制後で単独トップのデビューから7試合連続試合安打も記録。高卒スラッガーとしては上々のスタートを切ったにもかかわらずだ。やはり、プロ野球界も他のエンタメと同じく注目のサイクルが異様に短く早くなってきている。現代のスター候補生は大変だ。爆発的に情報が拡散するので、早い段階で受け手からもういいよとなりやすい。本当の勝負は世の中に猛スピードで消費されてからである。

今の吉田輝星のスポーツニュースや記事にしても、ライトユーザーピープルに野球を届かせようとしているわけでしょ。

 1年前はメディアの清宮情報が多すぎとよくディスられていたが、例えば人はTwitterのタイムラインに記事リンク先が出てきたら、「自分に向けて書かれたもの」「自分に向けて言われたこと」みたいな錯覚を覚えがち。でも、違うんだ。俺は対象じゃない。今の吉田輝星のスポーツニュースや記事にしても、ナチュラルに球場へ通いペナントレースを追いかけるような野球ファンを振り向かそうと思ってるわけじゃない。それ以外のライトユーザーピープルに野球を届かせようとしているわけでしょ。地上波の『珍プレー好プレー』みたいなテレビ番組も同じカテゴリーだ。過去映像が多すぎって、そういう客層に向けて作ってる。なんて前提で捉えると、わざわざ自分が対象外の情報を追いかけて何か言うのがアホらしくなってくる。清宮には今季20本塁打を期待するし、根尾君や吉田君も活躍してくれたらいいね。そのくらいの気持ちの余裕は持っていたいものだ。
 
 自分にとって何が大事で必要か分かっていない奴は、何も手に入れることができない。とりあえず焦りと不安で全方面に向かって怒る。……とここまで書いて、学生時代に感じたカプセルホテルでキレるおじさんの「寂しさ」の正体が見えた気がする。だって、すべてに対して不機嫌ってことは、いい歳こいて人生の最優先事項すら分かってないってことだから。

 俺は清宮のホームランに拍手しながら、笑顔で締めの大盛り焼そばが食えるようなおじさんになりたい。

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