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セレッソ大阪ソウザと楽天ブラッシュから知った「自分で確認する」ことの重要さ【燃えろ!!デブ野球】第58回

燃えデブ第58回はマイナー169発男の楽天新助っ人ジャバリ・ブラッシュ!

残酷なようだが5年前とは違う。美しい記憶と現実のギャップだ。あれっ? 昔と違うじゃんと。

 やっぱり自分で確認しなきゃダメだな。

 長居スタジアムへJリーグ開幕戦のセレッソ大阪vsヴィッセル神戸を見に行ってきた。マスコミの話題は神戸の総年俸42億円トリオのイニエスタ、ビジャ、ポドルスキの“VIP”が独占していたし、そう言う俺も昔サッカー関連の仕事をやっていた頃、皆駆け出しの若手選手だったので勝手な思い入れがある。……はずが、神戸のビッグネーム達はスポーツニュースのワンシーンを切り取るダイジェスト映像では「さすが!」ってプレーを披露しても、1試合を通して追うと彼らは皆キャリア晩年のベテラン選手という当たり前の事実に気付かされる。残酷なようだが5年前とは違う。これはプロ野球でもサッカーでもプロレスでもよくある、美しい記憶と現実のギャップだ。あれっ? この女優、パッケージ写真と別人じゃん……じゃなくて、昔と違うじゃんと。ピッチ上で誰よりも目立っていたのは、セレッソの中盤で圧倒的な存在感を発揮した現役バリバリのソウザだった。

 でも、神戸のこのお祭り大型補強路線を否定する気はない。だって、フライデーナイトのまだ肌寒いヤンマースタジアム長居には42,221人の大観衆が集結したのだから。例えば、チケット単価は違えど新日本プロレスの年に1度の正月恒例イベント「レッスル・キングダム13」は観客38,162人なので、その凄さが分かる。行きの御堂筋線車内では、会社終わりに直行すると思われる若い男女グループがイニエスタとあいみょんと課長補佐のセクハラの話をしていたし、学生風2人組の姿も目立った。そんな彼らがスタジアムで無料配布されたDAZNロゴ入りのセレッソベースボールシャツを羽織り、ハーフタイムショーのNMB48に拍手を送る風景。こんなのは続かない? 確かに正論だろう。だが、この中から10人に1人でもまた観戦に来ようとJリピーターになってくれたらそれでいい。いつの時代も祭りは冷静に批評してもあまり意味はないのだ……なんつってスタジアムで無料提供されたシャウエッセン入りスープを一気飲みしながら、今週もダイナモコラム『燃えデブ』が始まった。

俺はソウザやブラッシュから「普段サボっていたら、要所で気合い入れてプレゼントしても無駄……」ということを、学んだ。

 楽天はサッカー界だけじゃなく、野球のほうでもFA市場の目玉選手・浅村栄斗を4年総額20億円の大型契約で獲得。で、その3番セカンド浅村の後ろを打つ4番は誰か注目される中、来日したのが新助っ人のジャバリ・ブラッシュだ。映画『死亡遊戯』のデカいアフロ、それはカリーム・アブドゥル=ジャバーだ。もう名前からして超強そう。沖縄開催の巨人とのオープン戦では“平成最後の大エース”菅野の151キロ直球を捉え、往年の横浜ブラッグス並の推定125メートルホームランをかっ飛ばしてみせた。さらに2打席目は追い込まれてから野上のカーブを溜めてコンパクトにレフト前へ弾き返す。あれっパワーはあるけど粗いタイプとどこかの野球サイトで読んだ気が……。ちゃうがな、デカくて巧い196センチ106キロのサダハル・オーとフリオ・フランコをフュージョンさせたような右打ち変則フォームのビッグ・ダディ。マイナー通算169発、500打点。昨季3Aでは83試合で29本塁打、OPS.1.131の驚異的な数字を残している。年齢もまだ29歳で、年俸1億2000万円はイニエスタの約27分の1だ(強引)。

 FA浅村やドラ1辰巳涼介のような派手なスターの補強はもちろん大事。巨人で言ったら丸の獲得はやっぱり超デカい。けど、ひとりじゃ勝てない。彼らを生かすも殺すも周囲を固める仕事人次第である。ヴィッセル神戸もイニエスタ、ビジャ、ポドルスキら走らないオールドスターを輝かせるために集めた山口蛍や西大伍のプレーがチームの命運を握るだろう。考えてみてほしい。彼女の誕生日やクリスマスのスペシャルなイベントをどうするかより、勝負を分けるのは何でもない普通の日々の態度だったりするわけじゃん。普段サボっていたら、要所で気合い入れてプレゼントしても無駄……ということを、俺は長居のピッチを駆け回るソウザやオープン戦のブラッシュから学んだ。

前評判とか過去の栄光とかそんなのはどうでもいい。目の前のプレーが圧倒的にリアルだ。

 確かに彼らはスポーツニュースや新聞の一面を飾る広く知られたスター選手じゃない。けど、実際に1試合を通して追うと、その存在は圧倒的に光ってる。なのに、神戸の敗戦は取り上げられても、ソウザの活躍はサッカー専門メディア以外で触れられることはほとんどない。でもだからこそ、スポーツ観戦は面白いんだよね。ある種の嘘が暴かれる瞬間がある。前評判とか過去の栄光とかそんなのはどうでもいい。目の前のプレーが圧倒的にリアルだ。このご時世、飲食店も映画も本も音楽も助っ人選手も、あらゆるエンタメはWebやアプリで分かりやすく点数がつけられている。情報の洪水だ。そこで溺れずにどうサバイバルするかって、もう結局は「自分で確認する」しかないんだよね。

 レビューの星数に騙されるな。グラウンドのスターとエロDVDのパッケージは疑ってかかれ。その先にしか未来はない。多分、俺はまた懲りずに長居にソウザを、仙台へブラッシュを見に行くのだろう。

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