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ヤクルト村上宗隆の“リアル・ストーリー”に往年の中村ノリさんを思い出した夜【燃えろ!!デブ野球】第59回

燃えデブ第59回は懐かしのいてまえスラッガー中村紀洋!

自分と20歳近く離れたプロ野球選手を見る体験、これぞおっさんビギナー野球観戦の醍醐味のひとつだと思う。

 19歳の頃、俺はいったい何を考えて生きていたんだろうな。

 ヤクルト村上宗隆が巨人とのオープン戦で東京ドームのレフトスタンドにホームランをかっ飛ばす映像を観ながら、そんなことを考えた。去年はイースタン2位の17本塁打を放ち、1軍デビューの広島戦では初打席初本塁打の大器。17年ドラ1スラッガーは2000年2月生まれなので19歳になったばかりだ。自分と20歳近く離れたプロ野球選手を見る体験、これぞおっさんビギナー野球観戦の醍醐味のひとつだと思う。これまでは年上のアニキへの憧れだったり、同年代の選手への感情移入だった観戦スタイルが、気が付けばグラウンドにいるプレーヤーが圧倒的に年下になってくる。そうなると、少し見方が変わるんだよな。基本的に“ヒーロー”や“超人”じゃなく“人間”として見るみたいな。例えば1軍初登板で緊張するな、っていやするでしょ。ハタチそこらで4万人を相手にする就職面接やれって言われたら誰だってビビる。

 188cm、97kgの村上君は立派なガタイといい面構えをしていた。別に最近よくヤクルトの“朝のフルーツ青汁”を飲んでるからとかじゃなく、昔の松井秀喜のような雰囲気だったよ。『報道ステーション』では前田智徳からのインタビュー後に、自ら打撃について質問しているシーンがカメラに捉えられたようにハートも強そうだ。巨人も清宮幸太郎の外れ1位で入札したが再度外してしまった。けど、仮にもしマスコミの注目度が高い清宮を当てていたら、DHのないセ・リーグで昨季あれだけ岡本を重点的に1塁起用できただろうか? 村上にしても巨人は「打てる捕手」としての指名だったので出てくるまでにもっと時間が掛かった可能性が高い。これで良かったんだよ。もし昔に戻れたらって面倒くさいからゴメンだね……なんつって『はなまるうどん』でゆずとろろ昆布うどんとカレーライスを流し込みながら、今週もスウィートナインティーンコラム『燃えデブ』が始まった。

高卒の91年ドラフト4位でプロ入りした1年目から、ファームの打撃コーチとバトルをかました中村紀洋。

 やっぱり和製大砲は夢がある。中日の一本足打法、それは大豊泰昭だ(懐かしい)。そう言えば、王貞治の55本塁打超えを願って背番号55のアングルはゴジラ松井より、無骨なホームランアーティスト大豊の方が先だった。今、ちょうど中村紀洋の『noriの決断』(ベースボール・マガジン社)を読み返していたけど、スラッガーは基本的に笑っちゃうくらいゴーイングマイウェイタイプが多い。だって己のひと振りで試合を決めちゃうわけだから。中村ノリさんも高卒の91年ドラフト4位でプロ入りした1年目から、ファームの打撃コーチとこんなバトルをかましている。

コーチ「今の打ち方では一軍レベルでは通用せん」
ノリさん「じゃあ、一回上げてください。一軍バリバリのピッチャーのスピード、キレを見せてください。打席に立ってみて、自分の打ち方で無理だとわかれば、そこで考えて対応するのがプロじゃないんですか」
コーチ「もうお前には教えん!」
ノリさん「分かりました。自分ひとりでやります」

 すげぇ……なんて生意気な……じゃなくて自分を持ってるルーキーだろうか。ここで心折れずに一流打者へと成り上がっていくノリさん。その自由すぎる行動や発言ばかり話題になるが、2000年前後の球界において“セの松井秀喜、パの中村紀洋”と称される平成を代表する名選手だった。2002年FA騒動の際は、当時のNPBコミッショナーから「松井君がメジャーへ行く。ここで中村君にも行かれると、本当に日本の野球が終わってしまう。何とかいい方向で、今後も日本の野球を支えて頂けないだろうか」という内容の手紙が届いたという。

忘れがちだけど客席の観客にもそれぞれのリアル・ストーリーがあるんだよな。

 あらためてその実績を見ると、中村の90年代後半から00年代前半の打撃成績は凄まじい。98年からの5シーズンで計190本塁打、542打点の荒稼ぎ。この数字は同時期のゴジラ松井の計204本、514打点と比較しても遜色のない数字である。試合を支配するのがエースで、一発で試合を決めるのが真の4番バッターの仕事だ。まさに中村紀洋は21世紀の幕開けを告げる大砲だった。

 そして、恐らくヤクルトの村上宗隆は新元号の幕開けを告げるスラッガーになるだろう。雑誌『KAMINOGE』最新号でスタン・ハンセンが小橋建太との対談において、「コバシたちが成長していってトップに立つようになったのはリアル・ストーリーなんだ。そこには本当の闘いがあった」と語っていたが、巨人の岡本和真にしても、骨折をしてしまった日ハムの清宮にしても、これから野球ファンはその和製大砲誕生のリアル・ストーリーを目撃することができる。で、忘れがちだけど客席の観客にもそれぞれのリアル・ストーリーがあるんだよな。隣に座った見知らぬ男性と少し話してみたら元甲子園出場経験者だったみたいなさ。子供も大きくなったし久々に夫婦で野球見たくなって的な球場に渦巻く何万人分の何十年分かの物語。自分がアラフォーのおっさんになったからこそ気付くプロ野球の仕組み。俺はたぶん客席側のリアル・ストーリーが書きたいんだろう。

 嘘のないフルスイング。フェイクじゃない日常。けど時にかます自己犠牲の送りバント。長嶋さんはたぶん正しい。プロ野球は人生そのものだ。

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