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「イチローは球界のアントニオ猪木である」と気付かされた闘強導夢2019【燃えろ!!デブ野球】第61回

燃えデブ第61回は7年ぶりの日本開幕戦を迎えるマリナーズのイチロー!

音楽でも漫画でも、何十年も追い続ける対象ってそんなにない。俺は今も昔も変わらず大音量で電気グルーヴを聴いてるよ。

 厚手のコートじゃなく、かっこいいジャンパーの季節だ。

 いつからかクローゼットには同じような私服ばかりになった。たぶん多くの男は30代を過ぎたあたりから、プライベートの服を時間をかけて選ぶのが面倒になってくる。若いときの判断基準は格好いいか格好悪いかでしょモテたくて。そりゃあこだわる。けど、中年男に大事なのは1980円のシャツか1万9800円のシャツかではなく、臭いか臭くないかだからね。すげぇ、なんてシビアな勝負なんだろう。春と言っても学生や新社会人の頃のように何かが新しく始まるわけでもない。縦も横もなく日常は今日も変わらず流れていく。俺は今も昔も変わらず大音量で電気グルーヴを聴いてるよ。

 音楽でも漫画でも、何十年も追い続ける対象ってそんなにないじゃん。中学の頃よく読んでたコミックスとか、大学の時にCD買ってたバンドとかさ、いつの間にか日常から消えてふと気になってググってみたら「えっ? まだやってたのか」って経験は誰にでもあると思う。世界は自分の知らないところで時間が流れている。そう言う俺も新作小説『ボス俺』を買ってくれた人から「何年か前の1冊目は知ってましたけど、あれから何冊も出してたんですね」と言われて一瞬ヘコむも、よく考えてみたら自分だって「昔、読んでたけど今何やってるのか知らない作家や歌手」なんて腐る程いるからね。いや、触れてきたモノの8割くらいはそんな感じだと思う。人間って切ないぜ……なんつって、『KYKかつ&カリー』のエビフライをかっ食らいながら今週もスネークフィンガーコラム『燃えデブ』が始まった。

すでに限界説を唱えるファンも多いが、でも「イチローなら」ってやっぱ心のどこかにある

 だから、イチローは凄いんだよ。いきなりぶっこんでるけど、みんな知ってるじゃん、その何十年の長いキャリアの過程を。東京ドームでシアトル・マリナーズの一員として7年ぶりの日本開幕戦に臨む背番号51を見るため、俺も久々に球場へ連日通っている。日本初戦は「球が遅すぎ」なんつって巨人若手投手陣相手に3タコを食らい、オープン戦は21打席連続無安打。昨年5月3日にはメジャー40人枠を外れ会長付特別補佐に就任した前例のないキャリアで、実戦感覚が心配されるプロ28年目のシーズンへ。天才ヒットメーカーも気が付けば45歳だ。テレビにアップで映し出されると白髪が目立ち、さすがに歳を取ったなという感じはする。

 7年前の日本開幕戦、イチローは前年に10年連続200安打が途切れたとはいえ、184安打をマークしてまだギリ現役バリバリの雰囲気があり、日本の観客も無邪気に国民的スーパースターを迎え入れた。しかし、17日のドームには4万6315人の観客が集まったが、妙な雰囲気を感じたのは事実だ。多くの人の頭をよぎる「これが最後になるんじゃないか」的な予感。いわゆるひとつの惜別の空気。ちなみに絶頂期のイチローが参加した2006年WBC初戦の観衆は、同じ東京ドームでも観衆たったの1万5869人である。またいつでも見れるし。学校あるし家庭もあるし……そんななんでもないようなことが幸せだったレーザービーム。すでに限界説を唱えるファンも多いが、確かに普通ならもう厳しいだろう。でも「イチローなら」ってやっぱ心のどこかにあるんだよな。長く見てきたファンほどそうだと思う。2009年WBC決勝戦のあのセンター前タイムリーみたいにさ。これまで多くの不可能を可能にしてきたわけだから。

誰にも似ていなかったスペシャルワン”イチロー”が、誰もが通る『加齢』という敵と戦う。

 息を吐くように当たり前のようにヒットを放ってきた選手が、ヒットが出ずに苦しんでいる。誰にも似ていなかったスペシャルワンが、誰もが通る加齢という敵と戦う。皮肉なことに、精密機械のようにヒットを量産していた時には分かりづらかった「人間イチロー」の姿が剥き出しだ。めちゃくちゃイケメンがビーチクの毛の濃さに悩むみたいな、超美人のピンヒールに犬のウンコがついてる的な生々しいリアリティ。完璧だった選手が、完璧じゃなくなり、また別の形の魅力や楽しみを我々に提供してくれる。まるで、90年代中盤から後半にかけてのアントニオ猪木の「ファイナル・カウントダウン」である。ベイダーの投げっぱなしジャーマンでマットに突き刺さる猪木は美しく、狂おしいくらい魅力的だった。そう、長いストーリーで多くのファンを魅了し、熱狂をワリカンし、その衰えすらも戦いに落とし込むストロングスタイル。

 猪木と同じくイチローもとことん予定調和を拒否してきた男だ。だから、平成の終わりとともにキャリアを終えるなんて分かりやすいイージーな展開は似合わない。追い詰められた背番号51がどんな名勝負を繰り広げるのか? 

 俺は今夜も東京ドーム、いや闘強導夢でイチローのストロングスタイルを目撃してこようと思う。

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