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中日ロメロのグラブ叩き付けは、プロ野球“情報”ではなく“娯楽”だった【燃えろ!!デブ野球】第67回

燃えデブ第67回は例和最初のグラブ叩き付けが話題の中日助っ人左腕ロメロ!

特集記事内の冒頭では唐突にギャルが男に対してこう聞く。「ね、DVDって最近よく聞くけど、どういうモノなの?」

 女殺しのDVDホームシアター。

 2001年2月発売の雑誌『サブラ』(小学館)を仕事部屋の棚から引っ張り出して乙葉や小沢真珠のグラビアを眺めていたら、そんな凄まじい特集記事があった。「メールで知り合い、デジカメで仲良く、ホームシアターでフィニッシュ……。これがsabra世代の三種の神器。キミも今日から始めよう!!」っていまやこの平成中期の三種の神器はスマホひとつでハイサヨウナラだ。特集記事内の冒頭では唐突にギャルが男に対してこう聞く。「ね、DVDって最近よく聞くけど、どういうモノなの?」「ビデオより映像がキレイで、音も映画館みたいな感じなんだよ」「へーホント」「ウチで見られるよ。『マトリックス』とかあるし。スゲー迫力だよ」という凄まじい流れから、おネエちゃんを部屋に連れ込もうとする。モテたければ、DVDホームシアターしかねぇ! というわけだ。

 いやなんでやねん……なんて冷静な突っ込みは野暮だろう。平成12年から13年頃、2000年から2001年にかけて、PS2の普及に伴いDVDが一気に身近に。大阪の日本橋のエロビデオ屋で徐々にエロDVDが並び出したのもこの頃のことだ。各メーカー、ビデオ時代にはなかったメニュー画面や特典映像に力を入れていて、わけの分からない熱気があった。当時の俺はソフト・オン・デマンドの菅原ちえ監督作品をまるで『こち亀』のコミックスを揃えるような感覚で買っていたが、彼女の代表作の『初めてのDeep Kiss』シリーズも01年9月の新作からDVDになったのをよく覚えている。男たちは、その薄いディスクケースを手に取り、21世紀が始まるぞと無意味に雨上がりの夜空を見上げたものだ。大型連休中に秋葉原へ散歩に出掛けたが、10年前によく通ったDVDショップはほとんど潰れていた。さらば平成エロDVDか……なんつって、『MEAT RUSH ヨドバシAKIBA店』で鉄板!カットステーキ&ハンバーグをかっ食らいながら今週もヘイセイシアターコラム『燃えデブ』が始まった。

これから生き残れる雑誌は、情報ではなく娯楽を提供できる媒体だけだろう。

 さらにDVDホームシアター特集では「女のコ系統別必殺ソフト28」コーナーにおいて、『K-1グランプリ99決勝』がオススメされたり、別ページでZERO-ONE旗揚げ戦直前の橋本真也が「三沢、小川とは必ず戦うことになるだろう」と吼えまくり、産経新聞の広告「群れない。逃げない。」に蝶野正洋が起用されている。当時の男性向け雑誌はとにかくおネエちゃんのグラビア、プロ野球コラム、プロレスや格闘技のバトル系インタビュー、車、パソコンやDVD等の最新機器紹介といった内容が多かった。最近の週刊誌でよく見る、会社員の副業情報とかスマホ料金を安く上げる裏技みたいな“お得情報”はほとんどない。あの頃の雑誌は基本的に“娯楽”だった。今の雑誌は“情報”だ。当然、情報は時間が経過すれば古くなる。鮮度が勝負。ただ、スピード勝負ならもちろんweb記事に分がある。これから生き残れる雑誌は、情報ではなく娯楽を提供できる媒体だけだろう。

 そこで、中日の新助っ人左腕エンニー・ロメロである。例によってなにが「そこで」なのかまったく意味不明だが、5月2日の巨人戦で5回裏に陽岱鋼から看板直撃弾を食らった瞬間、こんちきしょうと自らのグラブをマウンドに叩き付けた話題の男。その直前に岡本和真のレフトへの大飛球が東京ドームの天井を直撃し、アンラッキーな同点タイムリーとなりイラつきは限界に。そして捕手のサインに首を振り投じた144キロの甘い直球が、特大勝ち越し弾を浴びて怒りのグラブ叩き付けデスロード。このシーンをドームの客席で見ながら、なんかいいなと思った。昭和の星野仙一、平成の下柳剛、令和のロメロと続くグラブ叩き付けムーブの継承者。ドミニカ代表経験もある28歳の剛腕は、17年にはMLBのナショナルズで53試合に登板。平均球速は157.7キロに達したという(Slugger選手名鑑より)。日本ではすべて先発で4試合、2勝1敗、防御率3.00。マウンド上で熱くなる過ぎるのがたまにキズ。けど、観客って制御不能な感情が見たかったりもするんだよな。情報よりも娯楽。情報よりも感情。俺らも情報にスポイルされないために、時に仕事場で書類を叩き付ける必要があるんじゃないか?

いやぁロメロの激情には大型連休ボケの横っ面を張られたような衝撃を受けた。

 今の世の中、情報で溢れてるじゃん。飯食う前に食べログ眺めて、映画を観たらレビューを確認する諸行無常。プロ野球を見てる時でさえ、アプリで選手成績をチェックしちゃう悲しい性。そんな2019年にロメロは感情剥き出しでグラブを叩き付けたわけでしょ。あの怒りはガチだった。どんな数字よりもリアリティがあったよ。なんかこう忘れていた感覚を思い出させてもらったような気すらした。惰性で通ってた近所のラーメン屋で、他の客が突然ドンブリを叩き付けるみたいなさ。バカヤロー、インスタ映えよりも、目の前のスープの味だろって。おまえ、そこから逃げるんじゃねえってさ。いやぁロメロの激情には大型連休ボケの横っ面を張られたような衝撃を受けた。

 ハッキリ書くと、この連載コラムに有益な情報なんかない。今までもこれからも平成も令和も。だって、いつの時代も『燃えデブ』は完全に娯楽だからね。

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