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君は橋本真也と助っ人緊急補強に刻の涙を見たか?【燃えろ!!デブ野球】第75回

燃えデブ第75回はプロ野球の初夏の風物詩、ロマンとリアルの緊急助っ人補強!

40歳でこの世を去っている橋本真也。現代で言ったら巨人の阿部慎之助や新日の後藤洋央紀と同い年と考えると、あらためて早すぎる死だ。

 気が付けば、自分も橋本真也が亡くなった年齢だ。

 長州力引退とアントニオ猪木政界引退のニュースで、無性に読みたくなった一冊『証言「プロレス」死の真相』(河出書房新社)。橋本は誰よりもトップレスラー猪木に憧れて、誰よりも現場監督の長州とぶつかった男である。そんな破壊王も14年前の2005年7月に40歳でこの世を去っている。現代で言ったら巨人の阿部慎之助や新日の後藤洋央紀と同い年と考えると、あらためて早すぎる死だ。晩年の橋本が車を走らせ、無人の新日道場を眺めるエピソードはグッと来る。機動戦士ガンダムのアムロ・レイは「まだ僕には帰れる所があるんだ」と言ったが、アムロのホワイトベースの仲間が、橋本にとっての古巣・新日本プロレスだったんじゃないだろうか。

 ちなみにそのガンダムも2019年でTVシリーズ放送開始から40周年だ。最近、NETFLIXとAmazonプライムで『THE ORIGIN』含む人生で何度か目のファーストガンダムを見返している。子どもの頃は少年少女の乗組員たちに感情移入して見ていたのが、気が付けばアムロの母親の登場シーンで親側の気持ちになって泣けちまう。ホワイトベースのブライト艦長も初期設定は19歳と今年の高卒ルーキーの藤原恭大や吉田輝星と同世代だ。凄い、その若さでグズるアムロをぶん殴り「それが甘ったれなんだ! 殴られもせずに一人前になった奴がどこにいるものか!」なんてまるで昭和の相撲部屋のようなムチャクチャなロジックで叱咤激励する。現代なら完全に暴力事件で出場停止処分だろう。

 最近実感するのは、ベテランレスラーがリングで闘う相手がほぼ年下になるように、物書きも担当編集マンが自分よりひと回り近く若いなんてザラだ。「小さい頃に『ASAYAN』は超見てたけど『浅草橋ヤング洋品店』は聞いたことない」みたいなカルチャーギャップも多々生まれる。もちろん彼らは深夜テレビの『トゥナイト2』や『おとなのえほん』も知らない。同時にこっちが通っていない彼らの持っている情報ももちろんある。そのズレから生まれる文章だってあるだろう。同僚との付き合いからガールズバーまで、他者との距離を縮めるにはまずは互いを否定するのではなく、理解することだ。認めたくないものだな、自分自身の若さゆえの過ちというものを……なんつって新橋のホルモン屋『だん』でひたすら肉を焼きながら、今週も哀・戦士コラム『燃えデブ』が始まった。

プロ野球は交流戦も終わりリーグ戦が再開。開幕数ヶ月後のこの時期の補強は熱い。

 というわけで、プロ野球は交流戦も終わりリーグ戦が再開。巨人は新外国人投手のルビー・デラロサを緊急補強した。開幕数ヶ月後のこの時期の補強は熱い。皆、必死だ。今のチームに足りない箇所をなりふり構わずピンポイントで埋めにいく。将来じゃなく目の前の試合を戦い抜くために。デラロサの年俸は3000万円。ちょっと漂うこれで当たれば儲けもの感がまたいい。実は歴代名助っ人でもこの時期に電撃入団した選手は数多い。30年前の1989年(平成元年)にはバークレオの不振に頭を悩ませた西武が、あのオレステス・デストラーデを緊急獲得。6月20日のデビュー戦でいきなりホームランをかっ飛ばした。その前年、昭和最後の1988年(昭和63年)6月28日には中日の2軍でくすぶっていたラルフ・ブライアントを、主砲デービスの大麻不法所持による逮捕というアクシデントに見舞われた近鉄が金銭トレードで獲得。水を得たB砲は「生か死か、ホームランか三振か」というスリリングな打撃で移籍後74試合で34本塁打の驚異的な活躍を見せ、伝説の“10.19”の当事者となった。この週末に中日のモヤがオリックスへ金銭トレードで移籍したが、ドーピング違反のメネセスの代役は“令和のブライアント”になれるか楽しみだ。

 近年では巨人のフレデリク・セペダ、フアン・フランシスコ、アレックス・カステヤーノスという“ズンドコ三銃士”も皆途中入団組。個人的には、2011年7月に駆け込みで連れて来たジョシュ・フィールズも印象深い。打率2割と低迷し、あっという間にチームを去ったが、もし三塁手フィールズが好成績を残していたら、そのオフに村田修一をFAで獲得することもなかったかもしれない。そんなこんなで球史に残る実力派あり、話題先行の大物あり、ダメ元のかませ犬あり、助っ人緊急補強は筋書きのないドラマだ。焦って連れてくるからハズレが多いのもまたご愛嬌。もしかしたらチームを劇的に変えてくれるかもというファンタジーに溢れ、その一方でこれがハマらなかったらジ・エンド的な焦りも妙に切実だ。

いつの時代も客は危ういロマンとリアルのせめぎ合いにカネを落とす。

 危ういロマンとリアルのせめぎ合い。いつの時代も客はその攻防戦にカネを落とす。まさにリング上のビッグバン・ベイダーとか北尾光司、ASAYANにおけるモーニング娘。を見たとき彼ら彼女らに感じた魅力はそれだった。先日、新日本プロレスに電撃参戦したジョン・モクスリーにも同種のデンジャラスな匂いを感じる。なにかとんでもないことをしてくれるんじゃないのかコイツは……という期待と不安。助っ人緊急獲得だってそうさ。綺麗なボールパークで安定のエンタメ化を押し進める今の球界ではレアな出たとこ勝負のロマンとリアルが詰まっている。

 俺らはそんなデタラメさが大好物だったはずだ。その瞬間まで何が起きるか分からない。そう、まるであの頃のブライアントのフルスイングや、破壊王・橋本真也のファイトスタイルのようにね。

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