令和プロ野球、テレビから見るか? 球場から見るか?【燃えろ!!デブ野球】第79回
燃えデブ第79回はついに激動のファーストシーズン最終回!
プロ野球は勝っても負けてもハイまた明日の連続。けど、球場の客席に座ると、あくまで単純に「今」を楽しもうとするわけさ。
プロ野球、テレビから見るか? 球場から見るか?
無意味に懐かしの『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』風に書いてみたが、長いペナントレース中、よくそんなことを考える。例えば、テレビで見ていたら贔屓チームが悲惨な逆転負けを食らっても、チャンネルを『水曜日のダウンタウン』あたりに変えて、「まあこんな日もあるよ」なんつって風呂にでも入ればいい。それが、球場にいるとちょっと違う。先日、いつもの東京ドームとか神宮じゃなくて京セラドームでの巨人対ヤクルトを見に行ったら、移籍後初先発の古川侑利と2番手・大江竜聖がそれぞれ4失点。序盤で大量8点を失いジ・エンド。「若手に経験を積ませた」と言える試合だったが、実際にチケット代を払って現地にいると「年に一度の大阪シリーズでなにやってんねん」なんて普通に腹が立つ。
だから、俺は球場へ行くのかもしれない。だって、プロ野球は冷静に見ちゃうと、高校野球と違って目の前の戦いじゃなく143試合+ポストシーズンのトータルで勝負するわけじゃん。そうなると、勝っても負けてもハイまた明日の連続。そこで一喜一憂していたら選手と同じく心身ともに持たない。自分もテレビ観戦だと、もうそんな一歩引いたスタンスになっちゃう。けど、球場の客席に座ると、あくまで単純に「今」を楽しもうとするわけさ。それがライブの良さであり、最大のストロングポイントだ。夏フェスシーズンのこの時期、フジロックでもサマソニでもクーラーの効いた涼しい部屋でガリガリ君片手に動画中継見ていたら快適だよ。でも、クソ暑い苗場のグリーンステージで目撃したイギー・ポップとか、LCDサウンドシステムで無意味におっぱい出して踊っていたおネエちゃんとか、幕張の豪雨の中で見たナイン・インチ・ネイルズとかはその環境込みで一生忘れない。野球も細かい試合展開はすぐ忘れるのに、打球の飛んだ角度や大歓声とかそんな一瞬のディテールはずっと覚えてるんだよ……なんつって京セラドームで焼そばにがっつきながら今週もファイナルファイトコラム『燃えデブ』が始まった。
個人的にMLBよりプロ野球を見る理由も「ディテールへのこだわりと積み重ね」な気がする。
ディテール……おおっ、凄い言葉だ。さっき深夜テレビでやっていた『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』の魅力もディテールへのこだわりと積み重ねだった。で、個人的にMLBよりプロ野球を見る理由もそこな気がする。出身地が自分と近いとか、学年が同じとか、友達が行ってた大学だとかそういう選手たちの細部に感情移入していくわけ。いつの時代も、ストーリーに説得力を持たせるのはディテールだから。で、そのプロ野球は今、助っ人選手の季節だ。伝統的に外国人選手は夏に稼ぐ。春から練習でハードワークしすぎた周りが夏バテするのを持つように、助っ人が暴れる季節。来季の契約を勝ち取るために、来日したばかりの7月の駆け込み補強組も派手にアピールする。
ロッテのマーティンはライトからのレーザービームで超強肩をお披露目。阪神のソラーテは「2番遊撃」でデビューすると巨人戦でセクシー決勝2ラン。キューバ出身のマーティンは31歳、ベネズエラ出身のソラーテは32歳だ。それぞれメジャーでの実績もあり、老け込むにはまだ早い。ちきしょう、まだ終わってたまるかよ(死亡遊戯コラムのあの感じ)。そういうディテールは俺らおっさん野球ファンの心を打つ。母国に残してきた家族の話とかもうあっさり泣かされちゃう。
今の球界って平和じゃん。ドラフトも整備されて、空白の1日とか逆指名制度の裏金みたいなキナ臭さも消えた。
『1988年のパ・リーグ』(山室寛之著/新潮社)って本を読んでいて実感したけど、今の球界って平和じゃん。昭和はもちろん、平成だって球団消滅があれば、新規参入もあり、親会社が変わったチームもあった。激動の戦国時代。それが、令和は江戸時代みたいな雰囲気でしょ。身売りもなさそうだし、しばらく球団が増えることはあっても、減ることはないと思う。ドラフトも整備されて、空白の1日とか逆指名制度の裏金みたいなキナ臭さも消えた。大きな変化と言えば、いくつかの球団での新球場建設計画くらいだろうか。プロ野球が誕生して以来、これほど平和な時代はなかった。
先日、この連載でも取り上げた“オールスター戦の夏フェス化”もその流れの延長線上にある。時代は変わったのである。高校野球の連投問題や球数制限もそうさ。昔とは違う。で、その変化を受け入れるか、興味を失くすかは個人の自由だ。あんたはどうする?……なんつっていつまでも球場で大盛り焼そばをコーラで流し込みながら、プロ野球を眺めていたい。そして、くたばるまでその客席のディテールを書き続けていこう。
俺は脂肪燃焼より、人生を完全燃焼させたい。
See you baseball freak……
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